矢車附子(枝葉)の染め

 

先日、矢車附子の枝葉を使って糸を染めました。

 

伐採したものをもらい受け、実がたくさん採れました。

枝葉は実よりも薄く染まりますが、残った山盛りの枝を使わない手はないと思いました。

 

矢車附子はタンニン分が多いので、今回は豆汁下地をしていない精錬のみのカセです。

ひと手間が省ける、貴重な染め材料です。

糸600gに対し、チップは800g(約1.3倍)用意しました。

 

まずは細めの枝を選んで、押切とハサミでチップを作ります。

 

タンクにチップを入れて水を注ぎます。樹皮からは染液が何度もとれるので、今回は5回煎出します。

沸騰後20分熱して、すぐに布で濾します。

時間をおくと、煎出した成分が素材に戻ってしまいます。

 

数回煮出すと、少しかさが減りました。

 

 

糸の染めに入ります。

 

1~2回目の煎出液にカセを浸し、染めていきます。

3~5回目のものは後の染めに取っておきます。

40℃くらいから徐々に温度を上げ、カセを繰りながら80℃前後で20分温度を保ちます。

その後火を止め放冷し自然に温度を下げ、その間も時々カセを繰ります。

そのことで色ムラになるのを防ぎます。

 

ひと晩おいて、灰汁で媒染しました。

でも・・・思ったよりも色が薄い感じです。

糸に対してチップの量がちょっと少なかったようです。。

 

灰汁媒染で茶色みのある色にしたかったのですが、ここで方針を変えました。

灰汁と鉄の併用の媒染で色を出してみることにしました。

 

鉄の媒染剤を足し、20分浸けてカセを繰ります。

 

グレーがかった色が出てきました。

その後水洗し、もう一度染め。同じように染液に浸し温度を上げます。

20分保ったのち放冷します。染液の中でひと晩おき色を定着させます。

これでひと工程終わりです(染め→媒染→染め)。

 

今回は2度目の染めとのあいだに時間が空くので、カセを中干ししました。

濃い色のカセは、おそらく媒染の時に一番に浸けたものだと思います。

タンニンと鉄の結びつきが早く、液中の鉄と多く反応したのかもしれません。

次は注意が必要だなと実感しました。

 

2工程目の染めに入ります。

3~5煎目の染液にカセを浸け、同じように加熱していきます。

次第に色が糸に入っていきます。ゆっくりと温度を上げ、80℃前後で20分保ちます。

放冷する間も色素が浸透していきます。

 

その後、鉄と灰汁で媒染します。

カセを繰りながら、20分浸します。

 

再び染めます。これが最後の染めです。

 

同じように温度を上げ、80℃で20分保ち、放冷します。

 

翌日水洗して干しました。

渋めのグレーになりました。

色の辞典を引き合わせてみたところ、スティールグレイという色が一番近く思えました。少し硬質な灰色です。

グレーとひとくちに言っても、染料によって様々な色が出ます。

 

同じ種類の植物でも、採取した時期などの違いで別の色味になるのがとても興味深いです。

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